骨粗鬆症

甲状腺機能亢進症などの甲状腺疾患のある方

甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは骨を造ったり骨からカルシウムを溶かす作用があります。この甲状腺ホルモンの分泌が亢進すると、骨からカルシウムが溶ける方が勝り、骨量が減少します。

1. どんなメカニズムで骨量が減るか。

成長期を過ぎると、骨の外形はあまり変わりません。しかし、細胞レベルでは活発な代謝を行っており、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収が調和を保ちながら繰り返し起こり(骨のリモデリング)、骨量が維持されています。

甲状腺機能亢進状態とは身体の新陳代謝を調節するホルモンである甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、骨を含む全身臓器に影響を与える状態です。成因的には複数の病態がありますが、大部分がバセドウ病ですのでこれについて述べたいと思います。

甲状腺機能亢進症でみられる骨変化を一言で表しますと、高代謝回転型の骨代謝異常と言う事になります。培養細胞の実験では、骨芽細胞の増殖や基質産生を甲状腺ホルモンが刺激することが分かっています。
また、一方で破骨細胞の活性化ももたらす事が明らかになっています。組織レベルでも骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収の両方が活発になることがわかっていますが、全体としては骨吸収が有意となり骨量が減少してしまいます。骨から流出したカルシウムにより、高カルシウム血症の傾向が起こると、副甲状腺ホルモンの分泌が抑制され、腎でのカルシウム再吸収低下や活性型ビタミンDの産生低下が起こります。この結果、尿中へのカルシウム排泄増加、腸管からのカルシウム吸収低下が起こり、生体のカルシウムバランスは益々マイナス(骨を破壊する方向)となって行きます。


2. どのような検査を行うか。

甲状腺機能亢進症は女性に多い病気です。前頚部の腫れや眼球突出自覚し、体重減少、発汗、動悸、ふるえ等を感じる場合は甲状腺機能検査を受けることをお勧めします。血液検査で甲状腺ホルモンや肝機能、血算、コレステロール値等を測定し、その値から甲状腺機能亢進症の診断は容易です。毎年検診を受けている方で、上記の症状があり、コレステロール値が急に減少した場合は甲状腺機能亢進症を患っている可能性があります。

骨代謝の状態を把握するためには血液、尿中の骨代謝マーカーの測定が参考になります。骨密度を測定することにより骨量減少の程度を評価できます。


3. 治療方法、予防方法は?

甲状腺ホルモンの過剰が原因の病態ですので、ホルモン過剰を是正する治療が骨量の回復にも有用です。通常は抗甲状腺薬を使用しホルモンの正常化を図ります。副作用等で内服が困難な場合はアイソトープ治療や手術療法(甲状腺亜全摘術)を行います。
長期にわたり甲状腺ホルモン過剰の状態が続く場合、退行期骨粗鬆症を合併している場合は積極的な骨粗鬆症治療薬の使用を考慮しなければなりません。その際は骨吸収抑制作用の強いビスホスホネートやエストロゲン製剤が有用です。


4. 日常生活の注意

甲状腺機能亢進症は全身の代謝亢進を起こしますので、未治療では一日中マラソンをしているような状態です。治療当初は心身の安静と確実な内服を心掛けて下さい。甲状腺機能が安定すれば、生活制限は特に必要はありません。

女性に多い病気でもあり、特に閉経期以降の方は骨量減少が加速されますので、日頃から骨粗鬆症の食事療法や運動療法に御留意いただく事が大切です。

(監修 / 赤津拓彦先生:防衛医科大学総合臨床部講師)

 

後援:日本骨粗鬆症学会 (C)yutakanahone-suishin-iinkai