骨粗鬆症

肝硬変などの慢性肝疾患のある方

肝臓は様々な物質を産生したり胆汁を分泌しています。肝臓の機能が低下すると、腸管からのカルシウム吸収を促進する活性型ビタミンDの産生が低下します。また、胆汁の分泌が低下すると、腸管からのビタミンDの吸収が悪くなります。その結果、血液中のカルシウムが減少し、それを補うために骨からカルシウムが溶け出し、骨量が減少します。


1. どんなメカニズムで骨量が減るか。

成長期を過ぎると、骨の外形はあまり変わりません。しかし、細胞レベルでは活発な代謝を行っており、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収が調和を保ちながら繰り返し起こり(骨のリモデリング)、骨量が維持されています。慢性肝疾患に伴う骨代謝異常は肝性骨異栄養症と総称され、骨粗鬆症と骨軟化症が含まれています。前者は御存じの通り、骨のミネラルと基質蛋白質が両方とも減少してしまう病態です。後者は基質蛋白質は十分なのですが、ミネラルの沈着が減少してしまう病態です。いずれの場合にも骨組織は脆弱化し骨折を起こし易くなります。頻度からは骨粗鬆症が多いようです。慢性肝疾患と言っても一つの病気ではなく、骨量減少の理由についても複数の原因が検討されています。以下に概要を述べますが、まだどの原因が主役なのかは十分解明されていません。

胆汁うっ滞を起こす原発性胆汁性肝硬変や硬化性胆管炎では小腸への胆汁酸の分泌が減少します。すると、脂溶性ビタミンであるビタミンD、E、K、Aの吸収が障害されます。ビタミンDは腸管からのカルシウム吸収を調節する活性型ビタミンDの前駆物質ですのでビタミンD不足が骨の減少をもたらす原因となります。また、脂肪酸の吸収も障害されるため、腸管内の脂肪酸とカルシウムが結合し、カルシウム吸収はさらに低下することになります。吸収されたビタミンDは肝臓で25(OH)Dに変換され、その後腎臓で活性型ビタミンDである1,25(OH)2Dに変換されます。極端に肝予備能が低下した場合はこの変換がうまく行かずさらに骨量は減少することになります。ビタミンKの不足も骨量減少に関与しているかも知れません。治療に免疫抑制剤や副腎皮質ステロイドを使用している場合はそれらの薬剤により骨量が減少します。

アルコール性肝障害やウイルス性肝硬変でも骨量減少がみられることが分かっています。これらの場合にも上記の機序が関与していると考えられます。加えて、全身状態の悪化による安静臥床による屋外での日光浴や運動の制限、栄養状態の悪さによるカルシウムや微量元素(亜鉛)摂取不足、蛋白質合成障害等も骨量の減少に関与しています。


2. どのような検査を行うか。

軽い肝機能障害で骨量が減少することはないと考えられます。すでに肝機能障害をお持ちの方は肝機能障害の程度を血液検査(血算、生化学、凝固能等)で確認なさって下さい。長期の慢性肝障害のある方、肝硬変を患っている方、慢性の腰背部痛を持たれている方では骨量が減少している可能性がありますので、骨密度測定により骨量を確認なさるのが安心です。最近活用されるようになってきた骨代謝マーカーについては肝線維化の影響を受ける事がありますので解釈に注意が必要です。


3. 治療方法、予防方法は?

予防法としては食事からの積極的なカルシウムとビタミンDの摂取が重要です。また、適度な運動と日光浴は骨量維持に有用ですので主治医の許可が得られる場合は実践なさって下さい。
治療法としては、カルシウム製剤や活性型ビタミンD製剤の使用が基本となります。また、ビタミンK製剤や骨吸収抑制剤であるビスホスホネートも試みて良い治療法です。


4. 日常生活の注意

偏りのない食生活、特に十分なカルシウムとビタミンDの摂取が重要です。また、投薬を受けている場合は確実に内服するよう御注意下さい。慢性肝疾患では安静が強調されるあまり、屋外での日光浴や運動が制限されがちです。体力が落ちると、ちょっとした段差や滑りで転倒したり、尻餅をついて骨折することも稀ではありません。肝疾患の状態により、生活制限、食事制限の状態が変わりますが、主治医との連携を密にし、できるだけ活動的な日常生活をお送り下さい


(監修 / 赤津拓彦先生:防衛医科大学校総合臨床部講師)

 

後援:日本骨粗鬆症学会 (C)yutakanahone-suishin-iinkai