骨粗鬆症

思春期からの無月経、揮発月経、卵巣摘出などの婦人科系疾患のある方

卵巣はエストロゲンという女性ホルモンを産生します。エストロゲンは骨からのカルシウムが溶け出すのを抑える作用があります。卵巣機能に異常があるとエストロゲンの分泌が低下し、骨量が減少します。

1. はじめに

我が国では急速な高齢化社会を迎え、加齢に伴う疾患として骨粗鬆症が注目されています。閉経より女性ホルモン(エストロゲン)の減少により骨量の低下が起こり、骨粗鬆症発症のリスクが増加することがよく知られています。また、エストロゲン補充療法により骨量が増加することから骨代謝にエストロゲンが深く関与していることは広く知られています。

閉経によらず、性成熟期の女性においても何らかの原因によりこのエストロゲンの分泌が抑制(性腺機能低下の状態)されますと、骨量の低下を招く可能性が高くなります。
近年、思春期以降の骨量増加や維持に男性ホルモン(アンドロゲン)が大きな役割を持っていることが徐々に解明されつつあります。その一方で、エストロゲンレセプター異常やアロマターゼ欠損の男性症例の報告から、エストロゲンは性差を越えて骨代謝に重要な働きをしていることが判明しています。以下、成熟女性の性腺機能低下に伴う骨粗鬆症(続発性)について概説します。

2. 女性の性腺機能低下による骨量低下

閉経後に卵巣からのエストロゲン分泌が低下し、骨代謝回転が骨吸収優位に亢進することから、いわゆる閉経後骨粗鬆症が発症することは良く知られています。性成熟期の女性においても何らかの原因によりこのエストロゲンの分泌が抑制(性腺機能低下の状態)されますと、骨量の低下を招く可能性が高くなります。


1) 診断
診断には性腺機能の低下(低エストロゲン状態)の証明が重要です。性腺機能低下の原因として、ターナー症候群、神経性食思不振症、過度の運動から発生するAthletic amenorrhea症候群、両側卵巣摘出術、下垂体疾患、抗ゴナドトロピン薬剤の投与などがあげられます。また、血中プロラクチンが異常高値になりますとエストロゲンの分泌が抑制されるため、プロラクチン産生腫瘍や向精神薬、三環系抗うつ剤、降圧剤(レセルピン、メチルドーパなど)、胃腸薬(スルピリド、メトクロプラミドなど)の長期服用でも骨量の低下を招く可能性があります。

明らかな原因のわからない続発性の無月経や稀発月経も性腺機能の低下を疑う必要があります。検査としては血中エストロゲン、卵胞刺激ホルモンの測定のほか基礎体温表も役立ちます。

骨量低下の診断は骨密度測定(DXA法、pQCT法、超音波法)によりますが、続発性骨粗鬆症の診断基準は現在のところ確立されていませんので、原発性骨粗鬆症の診断基準に準じて判定します。



2) 対策・治療
性腺機能の低下による骨量減少の治療の原則は、性腺機能の回復です。原因と考えられる因子の除去が大切で、過度の運動、ダイエットの中止、薬剤性の場合は中止や他の薬剤への変更を行います。下垂体腺腫では外科的治療を行うこともあります。それでも改善が認められない場合は躊躇することなく薬物療法を開始します。

内因性のエストロゲン低下が確認された場合にはエストロゲン補充療法(ERT)を行います。性腺機能の低下による骨量減少に対し、エストロゲン補充は原因治療として第一選択で、骨量以外の異常に対する治療としても必要です。しかしERTだけでは完全な骨量の回復が得られないことも多いため、その際にはビスホスホネートや活性型ビタミンD、ビタミンK2といった他剤を使用することも考慮すべきです。

ビスホスホネートは破骨細胞に作用し強力に骨吸収を抑制し、その結果、骨量の増加を起こします。活性型ビタミンDは腸管に作用しカルシウム吸収を亢進し、カルシウムバランスを正に傾けることで骨量増加が期待されます。ビタミンK2は骨基質のオステオカルシンのグルタミン残基のカルボキシル化に必須で、骨の石灰化を促進し、骨形成を促進します。これらの薬剤は性腺機能には影響せず、ERTによる骨量の増加効果が少ない場合には積極的に用いても問題ないと考えられています。


3) 治療上の問題点
一般的に性腺機能低下の原因を除去しても性腺機能がすぐに回復することはまれです。また、性腺機能低下の状態が長いほど、その治療にも反応が悪いことが多いものです。その結果ERTを比較的長期にわたり施行する可能性が高くなりますが、ERTには重篤な副作用が出現する場合もあり、その管理には注意が必要です。
性成熟期の骨粗鬆症・骨量減少では、治療により骨量増加が認められたとしても、依然その頂値が低いため、閉経や加齢に伴う原発性骨粗鬆症の予備群であることが多く、長期間のフォローが必要です。

3. まとめ

性成熟女性でもエストロゲン減少により骨量低下が起こります。ホルモン(エストロゲン)補充療法は欠乏したエストロゲンを補い、亢進した骨吸収を正常化させることで、性腺機能低下に伴う骨粗鬆症の治療に用いられています。その作用機序には不明な点もありますが、消化管や腎に対する間接作用、サイトカインを介した骨への作用の他、直接作用も指摘されています。エストロゲンを用いた治療では乳癌、子宮体癌や血栓症のリスクが指摘されているため、その管理には充分注意が必要です。

また、性成熟期の骨粗鬆症・骨量減少では、治療により骨量増加が認められたとしても、依然その頂値が低いため、閉経や加齢に伴う原発性骨粗鬆症の予備群であることが多く、長期間のフォローが必要であり、ビスホスホネートや活性型ビタミンDなどの他剤を使用することも積極的に行うべきです。


4. おわりに

性腺機能低下症と骨粗鬆症について概説しました。エストロゲンは性差を越え、骨に対し重要な働きを示します。何らかの原因によりこの性腺機能が障害されますと、骨量の低下が起こり、骨粗鬆症やそれに伴う骨折のリスクが高まります。女性ではターナー症候群、神経性食思不振症、両側卵巣摘出術、抗ゴナドトロピン薬剤投与を受けている患者などでは、積極的な検査・治療が必要であると考えられていますが、性ホルモンの骨作用にはいまだ不明な点が多く、さらなる基礎的、臨床的研究の必要があります。

(監修/茶木 修先生:横浜市立大学医学部産婦人科)

 

後援:日本骨粗鬆症学会 (C)yutakanahone-suishin-iinkai