骨粗鬆症

婦人科医の治療方針・治療戦略

治療対象

婦人科における骨粗鬆症治療の特徴は、骨粗鬆症には至らないレベルでの骨量減少、あるいは骨量減少症と呼ばれるレベルでの病気の基準を一つ設け、そこから治療の対象と考えていることです。
つまり骨粗鬆症の人ばかりでなく、その予備軍の人も治療の対象となります。患者さんは更年期以降の生理が不順になったり閉経を迎えた方が中心ですが、二次性あるいは早発性閉経とか、婦人科系の癌で若いうちに卵巣を取ってしまったような方も対象に入ります。


治療方針

治療方針としては、まず入念に検査をして症状を正確に把握し、患者さんに十分な説明と情報提供をして治療法を決定し、かつその結果を検証していくということです。

まず検査ですが、デキサ法で腰椎や大腿骨の骨密度を測定すると同時に、必ず骨の単純レントゲン撮影をするようにして、骨折がないかどうかを確認します。なぜかというと、骨密度が極端に低く、骨粗鬆症が進行しているような人は骨がつぶれてしまっていることも多く、その場合デキサ法でみると数字のみが一人歩きをして、とても良い値が出てしまうことがあるのです。密度の測定ですから、潰れてしまうと値が高くなってしまうわけです。問診も十分しますし、他の病気が隠れているといけないので、一通り全身のチェックもします。

さらに詳細な骨代謝マーカーを測定して、骨代謝の状態の把握に努めています。骨密度が低いといっても、閉経後の骨粗鬆症のように高回転型の骨代謝の場合と、そうではないけれども実際に骨密度が低いという場合では、薬剤も使い分けなければなりませんので、検査は重要です。

婦人科ということもあって、骨量減少以外にも更年期症状などがみられた場合はホルモン補充療法を中心に患者さんに説明しています。もちろんホルモン補充療法だけでなく、今日世界的に行われている治療法及び日本で認められている薬剤の説明をします。毎週、最新の論文を読んだり、学会に行ったりして勉強してきたことを報告しあい、その時の最新情報に基づいて患者さんに情報提供をしています。

具体的例をあげると、ビスホスホネートの使い方やビタミンDの使い方、それらの併用が可能かどうか。ホルモン補充療法でもその投与量の問題など、選択肢はなるべく多く提供します。あくまでもデータに基づいて優先順位をつけた上で患者さんに提示して、患者さんの方でトライしようと結論が出たものだけを治療法として採用する、という考え方です。またホルモン補充療法に限らずその他の治療法でも、副作用というのは出てくる可能性があります。患者さんが病気こと、治療のこと、薬のことなどをきちんと理解していないと長く続かない可能性が高いため、十分なインフォームドコンセントの上で治療法の選択・決定をしています。

さらにその効果判定として、1カ月目、3カ月目、6カ月目に骨代謝マーカーや問診、副作用のチェックなどを行います。血中カルシウム濃度の変化とか尿中のカルシウム排泄量とか、かなり細かなチェックもします。

骨折を抑制するというのが骨粗鬆症の治療のエンドポイントになると思われますが、そういった面から一番効果のあるのはビスホスホネートです。その次がホルモン補充療法になります。次いでビタミンD。カルシトニンは効果は認められているのですが、注射薬のため週1回の通院が必要となり、患者さんの負担も増えるのであまり積極的には取り入れていません。


ホルモン補充療法と骨

ホルモン補充療法について少し詳しく説明しますと、骨粗鬆症以外にも、高脂血症の抑制など良い面がかなりあるのですが、やはり最大の関心事は副作用です。私たちがホルモン補充療法を採用した場合は、乳癌のチェックと子宮体癌、直接的に関係はないのですが子宮頚癌のチェックもします。子宮体癌、頚癌は細胞検査を。内診と超音波検査で卵巣癌のチェックもします。癌のチェックは約6カ月ごと、乳癌は6カ月ごとの触診と年1回のマンモグラフィーとかなり厳密にフォローしています。検査が多いので逆に患者さんの負担になったりもするのですが、安全かつ有効にホルモン補充療法をすすめるにはこのくらいのチェックをしておかなければと考えています。

骨に対するホルモン補充療法の効果は個人差が大きく、顕著に骨密度が高まる人も多いのですが、だいたい2~3年経過すると骨の増加作用は落ち着いてしまうようです。維持効果は残るのですが、増加効果は少しずつ薄れてくるというわけです。骨代謝マーカーなどで常に評価しながら、効果があまりに薄くなっているような場合には、こと骨に関してはホルモン補充療法が不必要になることもあります。

またホルモン補充療法には出血とかの問題もあるので、患者さんが拒否した場合には、別の薬剤を提案します。イチドロネートとかビスホスホネートとかですが、それぞれの特徴、期待される効果、副作用などすべてお話ししたうえで選んでもらいます。


ビタミンDについて

日本人は潜在的にカルシウ不足、ビタミンD不足の民族だといわれます。特に高齢になるとカルシウム吸収率が低下するので、それを補う意味でも吸収率を上げるビタミンDは理に適っていると思います。薬剤というよりサプリメントとして利用するのが良いかも知れません、高齢の方の場合など特に。ホルモン補充療法との併用も効果的で、相乗効果があると考えられます。ただ、ビタミンDとかビタミンKとかは、最終的な結果というか効果が明確にはなり難いため、勧めずらい点もあります。

つまり、ほおっておけば骨密度が仮に10のレベルで減ってしまう人に、ビタミンDとかビタミンKを投与した場合、その減少が8に抑えられたとしても、実際に骨折が起こってしまっては最終的には効果がない、ということになってしまうからです。しかし、骨に関するリスクをできるだけ減らすという観点からも常にベースにあるべき薬だと思います。


(監修 / 茶木 修先生:横浜市立大学医学部産婦人科講師)

後援:日本骨粗鬆症学会 (C)yutakanahone-suishin-iinkai