アドバイザーからのメッセージ
2015年

総アドバイザー
 先生
原宿リハビリテーション病院 名誉院長

健康な骨と関節で健康寿命をのばしましょう

2000年にWHO(世界保健機関)が健康寿命を提唱して以来、寿命を延ばすだけでなく、健康で自立した生活を送れる期間を伸ばすことに関心が高まっています。

厚生労働省の発表(*平成22年国民生活基礎調査)によると、介護が必要となった主な原因を要介護度別にみると、要支援者では「関節疾患」が約2割で最も多く、要介護・要支援の総数では「関節疾患」「骨折・転倒」がともに約1割を占めています。

健康な骨や関節は、健康寿命の前提です。丈夫な骨をつくる食事や運動、転ばないための工夫、関節疾患への予防や早期治療など、適切な対策をとりましょう。

RICHBONE.comは2001年のホームページ開設以来、毎月更新して情報を発信しています。RICHBONE.comの情報は、健康寿命の延伸に寄与するものと確信しておりますので、ぜひ継続して読んで戴きますようお願いいたします。

骨粗しょう症編アドバイザー
萩野 浩 先生
鳥取大学医学部保健学科 教授

骨粗しょう症の最新情報

ここ数年、新たな治療薬の登場や診断基準が見直され「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」2015年度版が改訂されることになりました。

1980年代までは骨粗鬆症自体は病気ではなく、骨折が生じて初めて病気であるとする意見は専門医の中にも少なくありませんでした。その後、臨床研究や画像解析手法の進歩により骨折リスクは骨量と骨質で決まることが明らかになり、骨量減少の状態であっても、骨折リスクが高い場合には、骨粗鬆症と定義し、薬物療法がはじめられるようになりました。

骨粗鬆症の薬物療法に大きな変化があったのは、2011年のガイドライン改訂前後です。2010年に、重症骨粗鬆症や骨折経験のある人などが対象の骨形成促進剤であるテリパラチド(週1回皮下注射剤)が、骨折リスクがそれほど高くない閉経後女性向けには新しいSERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)のバゼドキシフェン酢酸塩が発売されました。2011年には、新世代の活性型ビタミンD3製剤と言われる、骨量を増加する作用が強く骨の破壊を食い止めるデータも示されているエルデカルシトールが、2013年には、強力な骨吸収抑制剤で椎体骨折・非椎体 骨折・大腿骨近位部骨折の発生を抑制することがわかっているデノスマブ(6カ月に1回の皮下注射)が発売されました。

また、従来から使われているビスホスホネート製剤では、多様な服用方法が可能となっています。「起床後すぐに服用し、その後30分は水以外を飲んだり食べたりしてはいけない」などの服用制限は同じですが、毎日服用のほかに週1回、4週に1回、月1回の内服薬、4週ごとに30分以上かけての点滴静注剤、月に1回の注射薬が登場しました。注射剤は、薬が飲み込みにくい、吐き気がする、座位が維持できない、といった経口投与が困難な患者さんに加え、認知症の患者さん、一度に内服する薬の種類が多い患者さんにとっても服用しやすくなり、確実に体内に薬効成分を届けることができます。このように新たな治療薬の登場により治療法の選択肢が増え、患者さんにあった継続的な服用が可能になり、骨粗鬆症の薬物療法がより効果的になったと考えられます。

このように薬剤や服用方法の選択肢が広がってはいるものの、骨粗鬆症の継続的な治療が困難であることは、日本のみならず世界共通の課題であり、欧米諸国では、骨粗鬆症治療を円滑に継続できる病院と診療所の連携システムを構築しています。日本においては、2012年に日本骨粗鬆症学会が「骨粗鬆症リエゾンサービス(OLS)」を立ち上げました。これは、地域医療現場、診療所、病院の相互の密接な連携により、医師のみならず薬剤師、理学療法士、看護師、栄養士などのメディカルスタッフが骨粗鬆症診療に積極的に関与し、チームで患者さんの治療をフォローするものです。日本骨粗鬆症学会は骨粗鬆症診療支援コーディネーターの役割を担うメディカルスタッフを「骨粗鬆症マネージャー」と呼び、2014年に600名が初めて認定されました。高齢化が進むなかで、骨粗鬆症治療の向上や再骨折予防に寄与することが期待されています。

骨粗鬆症の予防と治療の基本は、食事療法、運動療法、薬物療法です。骨粗鬆症の予防においては食事内容の見直しや適度な運動とともに定期的に骨量測定を行い、自分の骨の状態を知っておくことが重要です。骨粗鬆症が気になる方は早めに専門医に相談することをおすすめします。

関節編アドバイザー
大森 豪 先生
新潟医療福祉大学健康科学部健康スポーツ学科 教授

変形性ひざ関節症の最新情報

今の日本に膝や腰の悪い人はどれ位いるか?-変形性膝関節症、変形性腰椎症の疫学研究の最前線

変形性関節症は関節の加齢性の変化で、身体に約200ある骨の継ぎ目として機能しているどの関節にも生じる可能性があります。その中で、変形性膝関節症と変形性腰椎症の2つは最も頻度が多いと言われ、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)の主要原因にも挙げられています。

変形性関節症は、関節の変形が進行するにつれて疼痛や動きの制限、腫れと言った症状が現れますが、初期には無症状もしくはごく軽度の症状(関節の硬さやだるさなど)しかない事が多く、病院を受診する人は多くありません。したがって、変形性関節症と診断される人が一体どれ位いるかは、病院を受診する患者さんの数では分からないのです。疫学調査は、一般の方々を対象にして身体の状態を調べ潜在的な病気の頻度やかかりやすさ(危険因子)を明らかにしていく研究で、近年、変形性膝関節症や変形性腰椎症について日本でも大規模な調査が行われています。

厚生労働省と東京大学が中心となって行っているわが国最大の大規模疫学調査(ROAD:ロードプロジェクト)では、3000人を超える一般者を対象にして運動器に関する各種の調査を行っています。この調査によれば、現在日本には変形性膝関節症と診断される人は40歳以降で約2500万人いると考えられ、さらに各年代で女性が男性の約1.5倍多いことが明らかとなっています。これに対し、変形性腰椎症と診断される人は約3700万人で変形性膝関節症よりも多く、男女差は変形性膝関節症ほど大きくない事が明らかとなりました。また、変形性膝関節症や変形性腰椎症と診断された人のうち、膝や腰に何らかの症状(関節の硬さやだるさと言った軽度のものから歩けないと言った重症のものまで含めて)を有する人の割合は30%程度であることも明らかになってきました。さらに、変形性膝関節症、変形性腰椎症、骨粗鬆症のどれか1つを有する人はロコモティブシンドローム予備軍ととらえられ、この数は約4700万人に上ると推定されています。すなわち、単純に計算すると現在の日本の総人口12000万人のうち3人に1人がロコモティブシンドローム予備軍と考えることができ、決して自分とは無関係では済まされない問題である事が良く分かると思います。

変形性関節症は、私たちの起立歩行を含めた日常生活に大きく影響します。現在、膝や腰に何の症状もない人でもすでに関節の変化が始まっている場合も少なくありません。さらに、近年の医学の進歩により変形性関節症の治療においてもヒアルロン酸のように関節の軟骨の変性を抑制し再生を促すような薬も使われるようになっています。

是非、皆さんも日常生活の中で自分自身の膝や腰の状態について気を配り、心配な点があれば早めに骨と関節の専門医である整形外科の先生に相談することをお勧めします。 

転倒予防編アドバイザー
武藤 芳照 先生
日本転倒予防学会理事長/日体大総合研究所所長/日本体育大学保健医療学部 教授

転倒予防の最新情報

転倒を防いで健やかで実りある人生を

1.超高齢社会と転倒予防
今や我が国は、65歳以上の高齢者の割合が25.9%となり、「超高齢社会」です。高齢者の割合が全人口の7%を超える社会を「高齢化社会」、14%を超える社会を「高齢社会」と呼びますが、そのレベルをはるかに超え、4人に1人が高齢者の時代になったのです。高齢者の寝たきり、要介護の主な原因の一つが転倒・骨折です。一方、転倒・転落死は、現在、年間7,700人を超え、交通事故死の6,000人余りをはるかに上回る程になりました。また、高齢者の不慮の事故による死亡数では、窒息に次いで、転倒・転落が第2位を占めています。したがって、転倒を防ぐことで骨折や頭部外傷などによる重篤な障害や死亡事故を防ぎ、一人ひとりの高齢者が健やかで実りある人生を送ることに結びつけることができるのです。また、高齢者と共に暮らす家族の肉体的・精神的・経済的負担を減らし、社会全体の負担も減らすことができるのです。

2.転倒は命の黄信号
一人ひとりの高齢者の転倒は、主に3つの要因が重なって起こると考えられます。第1は加齢。誰でも若い時よりも年齢を重ねれば重ねるほど転倒しやすくなります。第2は病気及びそれに伴って服用する薬の影響です。病気には、パーキンソン病、糖尿病性神経障害、認知症などが、薬は服用する種類と量が増えれば増えるほど転倒のリスクは高くなります。第3は、運動不足。今や便利な電気機器や交通手段がどんどん発達・普及し、人はからだを使わないように使わないように生活をしています。当然、「使わなければだめになる Use it, lose it」のことば通り、運動不足の結果として、からだの機能が衰え、転倒をきたすことになります。以上をまとめると、からだが弱った(衰えた)結果、転ぶ。あるいはからだのひずみの結果、転ぶ。転ぶくらいにからだが弱ったり、ひずみをきたしていたことを示すととらえることができます。つまり、転倒は、「命の黄色信号」なのです。日頃行っている、歩く、またぐ、昇って降りるなどの日常生活上の移動動作をしっかりできている内は大丈夫ですが、歩くのが遅くなった、電車とプラットホームなどの間をまたぐ時にやや困難を感じる、階段を昇って降りる動作がしっかりできなくなったり、その際によろめいたりすれば、転倒しやすくなった証しです。振り返ってみて、病気、クスリ、運動不足などの要因を探ってみましょう。予防に勝る治療はありません。まさしく「転ばぬ先の杖」なのです。

3.転倒予防指導士 誕生
2014年4月に発足した日本転倒予防学会は、認定「転倒予防指導士」制度を作り、2015年2月に、最初の講習会と認定試験を行い、日本初の「転倒予防指導士」83名が誕生しました。これに加えて、転倒予防医学研究会時代に「転倒予防指導者養成講座」の修了者で所定の手続きを経て、「転倒予防指導士」に正式に認定される方々も見込まれています。転倒予防の指導・教育の専門スタッフが、全国の様々な分野で活動をし始め、転倒予防の輪がさらに広がることが期待されているのです。

後援:日本骨粗鬆学会、(C)yutakanahone-suishin-iinkai